札幌美術学園 園長 笠井進先生

札幌美術学園 園長 笠井進先生

 

 

 

札幌美術学園 園長 笠井進先生へ

 

先日、友人づてにあなたがお休みになられたことを知りました。 私の中では笠井進先生は札美の【園長】なので、
ここでは当時のまま園長と呼ばせて頂きます。  大山家は、父、兄、私の親子3人 長々と園長にお世話になりました。
すみませんが、私の記憶している園長をここに少し書かせてくださいよ。悪いようには書きませんから(笑)

私の中の園長の印象は、 背が高く細身でスタイルが抜群に良くて。声も渋かったですね。 若い女の子の生徒にもあの声は受けがよかったですよ。
全身白のスーツにハットを決めた日の園長の姿を思い出します。 それまで私は、映画に出てくるマフィアみたいな格好をした人物を 見たことがなかったので、はっきり記憶してます。とても格好良かったですよ!! で、園長に「どこに行くの?」と尋ねると「いいところだよ」って言っていましたけど、後で奥さんに病院(通院)って聞きました。あの格好で?! 今思うと、顔はW・バロウズに結構似ていましたかね。私は園長の顔も好きですよ。

園長の発言で私が覚えているのは、3つです。何度もアトリエにおじゃまさせていただき(というか、呼び出しですね) 園長からのお説教はあの世代では私が一番多く聞かせて頂き、可愛がってもらっていたと思います。 まぁ、正確には園長の発言というか、僕の中に残り、これからも忘れることがおそらく無い、園長の名言の3つです。

①「大山君、今日から僕はアホになる。」
急にその宣言をした日をしっかりと覚えていますよ。 奥さんがまじめに園長に向かって「やめなさい!」と言って止めていた光景は良かったですよ。女の子を中心に周りは完全に引いていましたが 私はとても面白かったし、スゴイな!と思っていました。 私が「じゃあ、俺もアホになる!」って言ったら 園長が「そうか、一緒にアホになろう!」と言っていたのが奥さんにバレて、またひどく叱られていましたね。 そして、数時間後に私のところに来て「大山君、アホって何だね?」って聞いてきましたよね。知りませんよ! もともと、園長発進なことでしたからね。 でも、当時の僕からなんだかわからない(若さ、無知ゆえの)パワーを園長自身に取り入れようとしていたのは知っていたし、 そのことはすごく嬉しかったんですよ。なんだか認められた気がしたんだと思います。

そして、
②「芸術家に本気でなるのなら、ホームレスになることを覚悟しなさい。」
③「僕だって、大津君みたいになれたんだ。」
この2つは同じ日のお話に出てきたと記憶しています、たしか園長のアトリエにおじゃました時のことですよね。 いつになく真面目な芸術のご教授の日でしたね。
金(地位)を取るか、純粋なる芸術をとるか。という美術界の向こう側には何が待っているのか。という話を 当時予備校生の私に真剣にしてくれました。当時の私には、ガツン!ときましたよ。
他にも、お話は覚えていますよ。犬をいかにして小脇に抱えるか。とか、女性にやさしくしなさい。とかね。 あと、犬をイジメちゃダメだよ。とか、花壇に入ったらダメだよ。とか・・・

園長は私に絵の描き方は教えてくれなかったけど、芸術 を教えてくれました。

私の呑気などんぶり勘定では、まだまだそちらに行く予定はありませんが、 いずれ必ずそちらには行くので、そしたらまたアトリエに呼び出してください。
私がそちらに行くときは、ちょっとは まともな成果をお見せできたらと思っております。

あなたは私の芸術の父。 本当に感謝しています。 ありがとうございました。 

 

園長 お疲れ様でした。      では、いずれ また。                

                             大山佳輝